| 「鉄腕アトム」のように、人間と同じような姿をもち、人間のやることなら何でもできる万能ロボットの実現は遙か彼方である。しかし、ロボット技術は幅広く、奥も深い。その一部を取り出したものでも、場面を限定すれば効果的に利用できる。社会のニーズに応じて、個別の役割を果たす専用型ロボットの開発がすすみ、いろいろな場所で使われるようになるであろうし、それらの積み重ねをベースに新たなロボット技術の発展が期待できる。たとえば、高級ブティック向けに「動くマネキンロボット」がすでに開発されている。これに服を記せてショーウインドウに展示し、その動きを利用した効果的演出が行われている。街を歩く人はだれでも見ることができ身近に感ずるであろうが、それらは専門家しか扱うことができないもので、一般の人々の中にあるようにみせつつ、実は巧みに隔離されている。ロボット技術の現状をふまえた上で、ニーズに応えた巧妙なコンセプトになっている。
2005年の現在、ロボットの技術の更なる発展を支えてくれるものとして大いに期待できるのはIT技術であろう。光ファイバーによる高速ネットワークの普及は今や世界の先頭を走っているといってよい。携帯電話はテレビカメラを内蔵した最新鋭のコンピュータでもあり,ネットワークで全世界に接続されている.ロボットもこのネットワークを介して人間からの指示や種々の支援を受けることができる。工業製品にはRFIDタグとよばれる極小のICチップをつけてその製品情報をいれておけば、無線で簡単に読みとれる。ロボットは、困難な視覚情報処理に頼ることなく周囲になにがあるかを確実に理解できるようになる。
ロボット単体に人間のような繊細かつ多様な感覚やあらゆる状況に対応できる知能を組み込むことはできていないし、今後も当分できそうにない。ロボット単体の能力はいまだ人間に遠く及ばないが、高度情報化された現代社会に組み込まれるのであれば活躍しやすくなったといえる。カーナビに使われているGPS技術は,地球上のどこであれ,自己位置を正確に知ることを可能にした.さらに街中に多数のビジョンシステムを配置し、ロボットやその周囲の状況を観測・認識してロボットに知らせるようにすれば、視覚のないロボットでも行動できる。また、歩道や建物壁面、あるいは建物内部のあちらこちらにRFIDタグを貼っておいて、ロボットが行動するうえで必要な情報を供給するようにすればよい。これらは、いわばロボットのために街を改造することであり、膨大なお金がかかる。しかし現代社会に欠かすことのできない自動車も、高速道路や一般道路、歩道や歩道橋、信号やカーナビのような運行支援施設、ガソリンスタンドや修理工場があって初めて快適かつ有効に利用できるものである。これまでに自動車のために膨大な公共投資がなされている。これと同様にロボットのための公共投資が必要である。図に示したのは、ロボットと人が共生する近未来の街のイメージである。
ロボットのための公共投資に見合った効果はある。ホームロボットが実現されたとき,高齢者や一般の人々がそのサービスを受けられるだけにはとどまらない。ロボット産業は大きな雇用を創出する裾野の広い巨大産業となるだろう。汎用機械として設計されたロボットの生産には多様な部品産業を必要とする。さらに家庭に入ったときの使われ方は千差万別であるため、それぞれに適した膨大なソフトウエアの開発要員が必要になるし、修理や改良などにも多くの技術者が必要となる.ロボットが空想でなく日本の経済を支える基幹産業になる日を期待したい。 |