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コーナー:ロボカップ概論
 
世界最先端の日本のロボット技術
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工場でのロボット導入:生産性の向上により日本経済絶頂期へ
日本のロボット実用化は、米国で開発された産業用ロボットの技術を導入し1969年に国産商品化したときから始まったといってよい。その後70年代、80年代に独自のロボット開発を伴って急速に普及発展した。70年代後半頃には米国を抜いて世界一のロボット大国の座を占め、現在に至っている。主要ユーザとしてロボット技術の発展に寄与したのは、当時から現在に至るまで日本経済を支えている自動車産業、電機産業であった。品質に厳しく、常に新製品を求める日本の消費者のニーズに応えなければならない業界、終身雇用下で労働条件の改善のためにロボット導入をむしろ歓迎した工場労働者、製品の飽くなき改良を追求した技術者、漫画やアニメを通じたロボットへの親近感など、日本固有の社会的経済的素地が、欧米諸国と大きく異なりロボット導入を容易にしさらに加速して、産業用ロボットで日本が世界一を続けている理由と考えられる。これらの産業用ロボットは、ロボット用に改造され整備された生産ラインで、事故のないよう労働者から隔離され、単純作業を繰り返すものである。

工場からでて作業するロボットを目指して:危険な作業の代行
80年代には、工場の外で人間に替わって危険な作業を行うロボットの研究開発が活発化した。83年に開始された通産省の大型プロジェクト「極限作業ロボットの技術開発」は、原子力発電所、海洋、工場火災現場などで作業するロボットの実現をめざしたもので、欧米との国際研究協力プロジェクトでもあった。また宇宙ロボットの研究開発も活発化した。この時期に研究開発されたこれらロボットは、特殊な環境での作業用で、専門技術者が操作操縦するものである。

パーソナルロボット:人間との共生を目指して
90年代には、特にその半ば以降、通常の人間社会に入ってきて、人間と共生することを目指したロボットの研究が活発化した。ホンダの2足歩行ロボットはその歩行の完成度の高さで、ロボット研究者・技術者に衝撃を与え、また一般の人々にロボットを身近に感じさせるきっかけになったものといえる。99年に発売されたソニーのAIBOは、累計で約12万台が市場で発売され、いわゆる理系でない一般の人々にも購入されている。90年代後半のこれらの状況は、日本独自のユニークなものであり、研究者や専門技術者だけでなく、一般社会にロボットが受け入れられ始めたことを示している。

ロボット技術のこれから
「鉄腕アトム」のように、人間と同じような姿をもち、人間のやることなら何でもできる万能ロボットの実現は遙か彼方である。しかし、ロボット技術は幅広く、奥も深い。その一部を取り出したものでも、場面を限定すれば効果的に利用できる。社会のニーズに応じて、個別の役割を果たす専用型ロボットの開発がすすみ、いろいろな場所で使われるようになるであろうし、それらの積み重ねをベースに新たなロボット技術の発展が期待できる。たとえば、高級ブティック向けに「動くマネキンロボット」がすでに開発されている。これに服を記せてショーウインドウに展示し、その動きを利用した効果的演出が行われている。街を歩く人はだれでも見ることができ身近に感ずるであろうが、それらは専門家しか扱うことができないもので、一般の人々の中にあるようにみせつつ、実は巧みに隔離されている。ロボット技術の現状をふまえた上で、ニーズに応えた巧妙なコンセプトになっている。

2005年の現在、ロボットの技術の更なる発展を支えてくれるものとして大いに期待できるのはIT技術であろう。光ファイバーによる高速ネットワークの普及は今や世界の先頭を走っているといってよい。携帯電話はテレビカメラを内蔵した最新鋭のコンピュータでもあり,ネットワークで全世界に接続されている.ロボットもこのネットワークを介して人間からの指示や種々の支援を受けることができる。工業製品にはRFIDタグとよばれる極小のICチップをつけてその製品情報をいれておけば、無線で簡単に読みとれる。ロボットは、困難な視覚情報処理に頼ることなく周囲になにがあるかを確実に理解できるようになる。

ロボット単体に人間のような繊細かつ多様な感覚やあらゆる状況に対応できる知能を組み込むことはできていないし、今後も当分できそうにない。ロボット単体の能力はいまだ人間に遠く及ばないが、高度情報化された現代社会に組み込まれるのであれば活躍しやすくなったといえる。カーナビに使われているGPS技術は,地球上のどこであれ,自己位置を正確に知ることを可能にした.さらに街中に多数のビジョンシステムを配置し、ロボットやその周囲の状況を観測・認識してロボットに知らせるようにすれば、視覚のないロボットでも行動できる。また、歩道や建物壁面、あるいは建物内部のあちらこちらにRFIDタグを貼っておいて、ロボットが行動するうえで必要な情報を供給するようにすればよい。これらは、いわばロボットのために街を改造することであり、膨大なお金がかかる。しかし現代社会に欠かすことのできない自動車も、高速道路や一般道路、歩道や歩道橋、信号やカーナビのような運行支援施設、ガソリンスタンドや修理工場があって初めて快適かつ有効に利用できるものである。これまでに自動車のために膨大な公共投資がなされている。これと同様にロボットのための公共投資が必要である。図に示したのは、ロボットと人が共生する近未来の街のイメージである。

ロボットのための公共投資に見合った効果はある。ホームロボットが実現されたとき,高齢者や一般の人々がそのサービスを受けられるだけにはとどまらない。ロボット産業は大きな雇用を創出する裾野の広い巨大産業となるだろう。汎用機械として設計されたロボットの生産には多様な部品産業を必要とする。さらに家庭に入ったときの使われ方は千差万別であるため、それぞれに適した膨大なソフトウエアの開発要員が必要になるし、修理や改良などにも多くの技術者が必要となる.ロボットが空想でなく日本の経済を支える基幹産業になる日を期待したい。


  ◆長谷川 勉◆
 九州大学システム情報学研究院知能システム学部門知能処理システム講座教授

工学博士(東京工業大学1987年)。
1973年東京工業大学卒。通産省電子技術総合研究所で知能ロボットの研究を行い、国家プロジェクトの「極限作業ロボットの研究開発」などを担当したのち、1992年から九州大学教授。電気情報工学科の教育と大学院システム情報科学研究院でのロボット研究をすすめている。2003年には、九州大学と福岡大学の大学院学生を指導し、ロボットサッカー世界大会「ロボカップ2003」中型機リーグで優勝した。



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